ムハンマド六世:西サハラ問題解決に向けたアプローチの「逸脱」を指摘
ムハンマド六世:西サハラ問題解決に向けたアプローチの「逸脱」を指摘
モロッコ国王ムハンマド六世は、「緑の行進」の39周年記念日に国民に向けたスピーチをおこなった。39年前の「緑の行進」によって、いわゆる「西サハラ」に対するモロッコの主権の回復が可能となった。

 国王は、「西サハラ」について、微塵たりとも自国の領土を譲るつもりはないというモロッコの決意を直接的な言葉で述べ、国連と米国に対して、この問題についての立場を明らかにするよう呼びかけた。
国際社会:
 モロッコはこの領土問題について、ウィン・ウィンアプローチと譲歩の精神に基づいた解決に向けて用意と善意を見せているが、モロッコの領土に関する主権については「交渉不可能」であると、国王は強調した。
 モロッコの全領土に対する主権は有効であり、譲渡不可能であり、交渉不可能である点は強調される必要があると国王は述べた。
 国王は、モロッコが20074月に国連安保理に提出した自治案は、ポリサリオ戦線との協議において「モロッコが提案できるすべて」であることを強調した。さらに、政治的プロセスからのいかなる逸脱や、「西サハラ」をめぐるモロッコの主権を尊重しないいかなるアプローチも、国連の行動の土台を崩すであろうと付け加えた。
 「自治案は、この地域紛争の最終的解決を達成するための交渉のなかで、モロッコが提案できる最大限のものである」と国王は述べた。
ポリサリオ戦線とアルジェリア、両者の支援者たちが、国連西サハラ住民投票監視ミッション(MINURSOの任務に、人権監視を組み入れるよう働きかけをしていることに対して、モロッコ政府が示している懸念について言及し、国王自身もこのような働きかけを拒否することを強調した。
 協議プロセスの原理原則と基準を再考するいかなる試みに対してもMINURSOの任務に人権状況の監視などを組み入れることについても拒否すると、国王は述べた。
 この点について、国王は、このような変更をすることは国連の行動の土台を揺るがすこと、そしてMINURSOが本来の任務から外れないよう、国連に呼びかけた。
 国王は、紛争の政治的解決に向けた米国の「積極的な役割」を評価するが、米国の紛争に対する立場は、依然として曖昧であると強調し、アメリカの現政権に対し、立場を明確にするよう求めた。
 「モロッコの努力や自治案をベースとした協議プロセスに対する支援は評価するが、今日、私はこの紛争に対する立場を明らかにするよう(米政権に対して)求める」と国王は述べた。
 「モロッコは民主的発展のモデルであり、地域の安全と安定を保障する影響力のある国家であり、テロとの闘いにおけるパートナーであると米国は述べているが、領土の一体性の問題に関する米国の立場には一定の曖昧さがある」と彼は述べた。
 米国は、国連主導の政治的プロセスによって、政治的で双方が受け入れ可能な解決を達成できるよう支援することを、しばしば表明しているが、モロッコの立場を明確に支援するという態度を明確には見せたことはない。
「我々は、この紛争を解決するために、モロッコが提案した自治案を、真摯で、現実的で、信頼のおけるものであると考えている」と、オバマ大統領、ケリー国務長官、ブッシュ駐モロッコ米国大使ら近年の米国政府高官は繰り返し述べている。
 この紛争に対する米国の曖昧さは、米国のスーザン・ライス国連大使が、国連安保理に決議案を提出した20134に明らかとなった。決議案には、MINURSOの任務に人権監視メカニズムに組み入れることを提案する項目が含まれていた。
この項目は、モロッコによる外交キャンペーンの末、最終的には決議からは外された。
アルジェリア:紛争の主要な当事国
 モロッコ国王は、アルジェリアを除外した西サハラ紛争の「解決策はない」ことを明確に述べている。国王は、アルジェリアに対し、この紛争における主要当事国としての責任を十全に果たすよう求めている。
国内社会:
この強い言葉の並ぶスピーチのなかで、この紛争となっている領土の問題は、一人ひとりのモロッコ市民の問題であると述べた。つまりモロッコ人にとって、実存的な問題であり、「時が終わるまで」それはモロッコであり続けると付け加えた。
 「サハラは、サハラの人々にとってだけの問題ではない。サハラはすべてのモロッコ人にとっての大義である。スピーチで述べたように、サハラは、単に国境紛争であるというだけでなく、非常に重要な実存的な問題である」と国王は強調した。
「モロッコは、サハラに存在し、サハラは、時の終わるときまで、モロッコの一部であり続ける」と国王は付け加えた。
モロッコは領土に対する権利を擁護する決意であることを明確にしたうえで、モロッコ国民は、この国の一部である領土を保全し、サハラウィの人々が尊厳ある生活を送ることができるように犠牲を払っていると述べた。
「これまでにサハラのために捧げられた命に加え、モロッコ国民は、精神的・物質的な犠牲を払ってきた、つまり南部地域の発展のために、持てるものを南の兄弟姉妹と分かち合ってきた」と国王は述べた。
 この声明は、モロッコは「西サハラ」の自然資源を搾取し、サハラウィの人々の利益を損ねているというポリサリオ戦線とアルジェリアの主張を支持する人々に対する明確なメッセージである。
モロッコ国王は、スペインが1975年にモロッコに引き渡した領土の状況と、現在の経済とインフラ整備のレベルについて言及した。国王は、モロッコが「西サハラ」の富を搾取していると非難するとき、これは、多くの人々が見過ごしている事実であると指摘した。モロッコはその領域の、あるといわれる富から利益を得ていないどころか、その領域の発展のために、自らのポケットから支払わなければならず、モロッコ国民にとってはむしろ負担であると述べた。
 「サハラ地域で生産されるものは、その地域の人々の基本的な需要を満たすために十分ではないということは事実である。敢えてここで述べておきたい。モロッコ国民は南部地域の発展のためのコストを支えている。モロッコ国民は、南の地域の兄弟たちが人間として尊厳ある暮らしができるように、自らの収入から支払っているのである」と国王は強調した。
 「我々がサハラを回復して以降、サハラから1ディルハムの収入を得るために、国家は7ディルハムを投資している。これは地域間連帯、そして国家の息子や娘たちの間の連帯の一部として行われているものである」と国王は述べた。
 モロッコ国王は、1975年のサハラ地域の人間開発指標と現在のものを比較し、サハラ地域の諸都市とそれ以外のモロッコの地域の指標を比較した
 サハラ地域の人間開発指標は、モロッコ北部のものより6低かったが、全国平均よりも高かったと述べている。
 「今日、南部地域の指標は、モロッコ全国の指標の平均よりはるかに高い。従って、声を高く、そして明確に、こう述べたい。モロッコがサハラ地域の富を搾取しているという誤った疑いを広めるのはやめよ」と国王は述べた
Leave a Comment
Your email address will not be published. Required fields are marked *